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『わたしは全然不幸じゃありませんからね!』(著・谷口 菜津子)を、読む。−ひとつの倫理学的考察−

人物

谷口女史は、私が半年程前から注目しているマンガ家さんである。

あるとき「なんか面白いニュースネタないかな〜」と、ネットサーフィンしまくってたら、マイナビニュースというサイトにいきつき、そこで「花とホルモン」というマンガが週一で連載されていることに気づいた。

8コママンガなのだが、それゆえに見やすい。

絵は、見てもらうと分かるだろうが、お世辞にも「美しい絵柄」とはいえない(谷口さん、すみません…)。

しかし、「面白い」のである。

登場人物の顔つき、台詞のあまりのリアリティーさに。

 

花とホルモン--深夜の居酒屋女子会 (5) 飲み会中の頻繁なメール&LINEチェックは女の影を疑わざるを得ない | 恋愛・結婚 | マイナビニュース

 

前置きが長くなった。

さて本題。「わたしは全然不幸じゃありませんからね! 」であるが、

まずこれ、タイトルがあまりにも秀逸ではないだろうか。

わたしは全然不幸じゃありませんからね! 

というのは、たしかに「わたしは全然不幸じゃありませんからね! 」

という意味にも違いないが、私はすっっっごい幸せ、というわけではない、ということでもある。

また、

わたしは全然不幸じゃありませんからね! 

という主張は、「がんばってる感満載」ともいえる。

私はこの点に惹かれた。

この主張は捉え方によっては「哀れ」「かわいそう」な感じを受けるかもしれないが、私はそこに一つの生命力というか、おおいなる根性、あるいは胆力を感じざるを得なかった。

そういえばチャットモンチーがかつて『生命力』というアルバムを出していた。

この中の曲は「シャングリラ」しか聴いたことないが、あれは好きだ。「ぐっ」とくる。

脱線した。

「わたしは全然不幸じゃありませんからね! 」はまた、表紙が良い。

あのピンクのキャラは谷口女史のアヴァターのようなものらしいが、これがかわいい。

表紙で言うところ、焦っていて、眼と眼の間に筋が入り、題同様、「がんばっている感満載」なのが、これ素晴らしい。本当に。

ここに谷口女史の才能を感じざるを得ない。

マンガは当然、内容が大事であるが、僕は表紙もりっぱな「マンガ」であると思う。

表紙だけでこれほど引き込まれてしまう自分を発見し、谷口女史の才能には一種の感動すら覚える。

また、表紙をめくるとキャラの表情が変わり、これもまた素晴らしい。↓

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いささか画像がでかくなってしまって申し訳ない。
しかし、なんだろうか、この「かわいさ」は。
今にも泣きそうな顔である。
いや、すでに泣いているが、号泣一歩手前な感がある。
さきに「がんばってる感満載」と表現したが、今度の表情は
「必死さ」
を感じる。
「必死さ」というのも、いってしまえばマイナスな意味にとらえられるかもしれないが、私はやはり好きだ。
そしてこの絵も。
あまりにも「ぐっ!」とくる。
そしてなんといっても、この表情からは
 
“I cannot live without you.”
 
というメッセージがばしばし感じられる。
つまり、「あなたがいないと私は生きては行けないんだ!」という、強い強い他者への懇請である。
このメッセージ(ここでは谷口女史のアヴァターの表情)は、このところかまびすしく喧伝されている、「起業」「ノマド」といった独立・サクセス志向とは一線を画するどころか、対極に位置する主張である。
「起業」「ノマド」といった独立・サクセス志向は、いってみれば、
 
「自分は誰も頼りにしない、媚びない、自力で生きてくんだ!」
 
という、強き主張である。
しかしここでの谷口女史のメッセージはそれとは真逆の、
 
「私はみんなに頼らないとダメなの!」
 
という主張である。
一見、ネガティヴかつ「弱い」主張ともとれるかもしれないが、これは言って見れば「弱さの力」である。
そういえば、哲学者の鷲田清一氏がそんな本を書いていた。

正直読んだことがないが、これはいわゆる「急がば回れ」「負けるが勝ち」という、人生の矛盾性を語っているものと思われる。そしてそれは真理である。

話は戻るが、先の谷口女史の「メッセージ」は、人間が人間として生きていくための本質的な、あまりに本質的なメッセージなのだ。

独立不覊に生きていくことも、それは理想的な人間像といえようが、そんな彼彼女も、月の砂漠で完全に自給自足の生活をする、というものでなければ、やはりどこかで誰かを頼ること、いや頼られることが必ず必要である。

そういう人にとって、谷口女史の「メッセージ」、

 

“I cannot live without you.”

 

は、彼彼女の存在意義、あるいは生きる意味をも見出してくれる、ひとつの神的なまでに素晴らしいメッセージではないだろうか。

これはいささか行き過ぎた表現かもしれないが、ひとつの「恩寵」てきなもののようにも思う。

まとめると、「強い」ひとにとっては「弱い」人が、必要で、「弱い」ひとにとっては「強い」人が必要であり、人間は、あるいは生命あるものはすべて多様でなければならない、という、生物学的多様性、あるいは人間の倫理を、谷口女史のアヴァターからご教授いただいた思いである。

 

(…全然マンガの中身の話してないな。。。)