マンガとは何か? ━━━佐藤秀峰氏を参考に

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佐藤秀峰『漫画貧乏』p21  佐藤漫画製作所 /漫画onWeb 2014年)

 

 この1ページでもって佐藤秀峰先生のマンガ哲学が分かる。

 

 ずっとブラックジャックによろしくが好きで、他のマンガにはない「何か」にすごく惹かれていた。

 

 「何か」。

 

 それは、少なくてもすごく重大なもので、実際に心理的にズシっと来るものだと。

 

 この1ページに書かれてあることから分かるように、彼のマンガ、海猿ブラックジャックによろしく、そして特攻の島は、登場人物が死ぬ。けっこう、死ぬ。

 

 しかし、それはただキャラクターがあっけなく消えてしまうのではなく、そのキャラの死についての前後背景、エピソード、周囲の反応、登場人物たちの台詞、顔つきなどが、あまりにも、それはもう、あまりにもリアリティーにあふれているのだ。

 

 ここで佐藤秀峰氏が編集者に言われているように、氏のマンガは明るいものではない。

 

 しかし彼のマンガには読者を噛んだり刺したりするようなものがあると思っている。

 

 この1ページの最後に氏が、

 

「僕が読者に与えたいのは現実に立ち向かう勇気です。」 

 

 といっているが、このような信念があるからこそ、氏のマンガは読者に夢を与えるのとは別の仕方で読者に多大なる影響力を及ぼしていることが分かる。

 

 この編集者の台詞からまた、編集部を通過している世の中のマンガ、つまりマンガと名のつくのもののほとんどは読者に夢を与えるものであり、それは言い方を変えれば現実から目をそらさせろということだ。

 

 佐藤氏はもっと過激に「読者に嘘をつくことが商売だと?」といっているが、言ってしまえばそのようなマンガが、いまは主流なのかもしれない。

 

 「インベスターZ」という投資に関するマンガがあるけれど、この主人公が財界のトップのような大御所に対していう台詞として、

 

「だからあなたたちはアメリカに負けるんだ!」 

 

 というのがある。

 

 この台詞を読んだときはあまりにも衝撃的で言葉を失った。

 

 これはリアリティーがあるものだし、佐藤氏のマンガに繋がるものがある。

 

 この台詞だけで持って、現実においてなにかしらの行動の着火点になりうると感じる。

 

 そんな、噛んだり刺したりするようなマンガに、これからも出逢いたい。